13 他部門との連携 チーム医療

 珍しく、お弁当を持ってこなかった奈須は、病院の食堂で昼食を取ることになった。昼食の時間が遅くなったので、食堂で食べている職員もまばらである。偶然に、同期入職の理学療法士の渡辺大輔(わたなべだいすけ)と臨床検査技師の山田花(やまだはな)がいた。テーブルの席が空いているので、一緒に食べることにした。

奈須:ここ空いてる?

渡部:食事遅いね。忙しいの?

奈須:師長になってから、雑用が多いのよ。

山田:奈須は、同期の出世頭だから頑張ってね。

奈須:そういえば、なはちゃんは、仕事忙しい?

山田:忙しいよ。どんどん検査項目が増えて、把握しきれないよ。病棟から、採血のスピッツの間違いが来るのも分かるよ。採血だけで、スピッツが何本もあるからね。わかりやすくしたいと思うけど、最近は、外注検査により、検査項目の幅が広がったからね。

奈須:外注検査が増えているのは、なんでなの?

山田:検査をすべて、病院内部で行うことが理想だけど、年に数回の検査のために、検査機器を購入することは、できないよね。検査機器を使えるようになるにも研修が必要なのよ。それに、外注検査会社と契約すれば、新しい検査がどんどんできるようになるから、先生が喜ぶのよ。急ぎの検査は、できないけど、最先端の診断ができることは、病院にとってメリットでしょ。でも、新しすぎて、診療報酬点数より、委託費が高かったり、請求ができないものもあるよ。それでも検査機器を買うよりは、採算的にいいみたい。

奈須:なんで?

山田:検査機器は、数百万から数千万円するし、試薬も高額で、使用期限が切れるのが早いのよ。良く業者が採算性分析した見積書を持って来るんだけど、試薬の使用期限やキャリブレーションを無視している場合があるの。こういったことを加味すると大抵、採算合わないね。それと、私達の仕事が増えるしね。

奈須:検査部は、内部検査と外注検査のバランスを考えて、採算性を分析しているのね。技師長は、大変そうだね。渡辺も大変なの?

渡辺:なんか俺の仕事は、大変じゃないといった言い方だね。

奈須:忙しそうなのは、わかっているわよ。いつも、残業だもんね。

渡辺:今は、学生が実習に来ているから、その評価とかで忙しいよ。理学療法士は、伝統的に実習が大変だからね。

奈須:そういえば、の話は、どうなったの?

渡辺:リハの専門の先生が来たら、始まるようだよ。ただ、リハの専門の先生は、少ないから、なかなか見つからないみたい。最近は、PTとOTの採用に困らなくなったけど、専門の医師が絶対的に不足しているよ。そういえば、うちのSTは、病棟でどう?

奈須:STが嚥下訓練を病棟でやってくれるようになってから、内科病棟では、肺炎が減ったみたいね。すごい効果があるって、斉藤部長がいっていたよ。うちの病棟でもSTのお陰で、口腔清拭がきちんとできるようになったから、すごくいいよ。

渡辺:点数も結構取れるから、今では、リハの稼ぎ頭になっているよ。時代が変わったね。

奈須:いろいろな職種との連携は、看護がやりやすくなるので、これからもどんどん提案してもらえるとうれしいよ。

渡辺:回復期リハビリテーション病棟を見越して、病棟でリハビリを提供するのはどうかな?奈須の病棟は外科だからあまりニーズはないかもしれないけど、例えば、乳がん術後のリンパ浮腫の対策を病室で行うのはどうかな?最近、女性の理学療法士が増えてきたから、患者さんも喜ぶし、看護師も助かるはずだよ。

奈須:それは、いいね。これまで、リハ室に行くのに、抵抗ある患者さんもいたからいいと思う。これからも、どんどん提案してよ。患者さんのためになるのであれば、ウェルカムよ。

 さまざまな職種が役割に応じた業務を行うことが、患者にとっていいことであり、病院にとってもいいことである。セクショナリズムを取り払い、各職種間で連携することが、これからの医療であり、病院経営の真の姿なのかもしれない。地域連携の前に、内部の連携を考えることが先決である。